ハプニングバー

ハプニングバー探訪記

 ハプニングバーをご存じだろうか。いや、聞くまでもないだろう。健やかなる男子諸君ならば、一度はその名をGoogleで検索にかけたことがあるはずだ。

しかし調べてはみてもよく分からず、またそのアングラなイメージから、実際に自ら足を運んだ者は少ないのではないだろうか。その実態を解明すべく、我々調査隊は東京の奥地へと向かった。

決意

 ポシャリーマンは刺激に飢えていた。家と職場、毎日同じ道を通い、同じ業務をこなし、同じサイトで自らを慰めて床につく。変化のない日常から心は飢え乾き、何か強烈な刺激を渇望していた。

あれは遡ること5年。初めてドイツのFKKを訪問した時のことだ。私はその圧倒的な異世界感に面食らった。目からなだれ込んでくる視覚情報を処理しきれず、脳みそがフリーズ一歩手前になるような衝撃。今思い返すと、あれこそ0.2秒無量空処だったのかもしれないが、それに匹敵するショックを求めていた。

となれば、やはり新しい世界、未知なる世界への探訪となろう。ポシャリーマンはハプニングバーデビューを心に決めたのだった。

潜入

 長いこと電車に揺られ、辿り着いた先は東京は新宿。時刻は23:00、遠征した私に無論終電などない。

週末ということもあり、駅を降り立つと街は人でごった返していた。酒と一時の解放感に酔った者達が、終電を求めてヒトの濁流を成していた。

そんな流れに逆らい、煌々と輝くコンクリートジャングルへと歩みを進める。歌舞伎町からホスト街を抜けたそのさらに先、周囲の人通りもまばらな奥地にその店はあった。外観は目立った看板もなく、こじんまりとした雑居ビルだ。

 情報によると、店はビルの2階だった。人気のないビルに恐る恐る入り、階段を上がるとそれらしき入口が現れた。インターホン付きの扉に監視カメラ、思わず適当に合言葉をつぶやきたくなる雰囲気だ。中からは複数人の笑い声が聞こえ、なにやら盛り上がっている様子。

(入りづらいなあ)

根が陰な私はすでに若干ひよっていた。いったん心を落ち着かせようと扉の前で立ち尽くしていると、中から扉が開いた。

会員さん?

店員らしき男が現れた。監視カメラでこちらの様子を見ていたのだろうか。

今回が初めてである事を伝えると、会員登録の案内をされた。入会金5000円入場料14000円で、合わせて19000円とのこと。このあたりは事前に調査していたので、問題なしだ。規約に目を通し、身分証を見せ、登録が完了したところで会員カードを手渡された。晴れて私も、会員制バーの会員である。いよいよ入店。

 入ってすぐの所に靴入れ、ロッカー、そしてバーカウンターがある。簡単なカクテル類ならば、時間いっぱい飲み放題となる。バーカウンターの右手横にはシャワールーム、左手にはお手洗い。そして向かいには広間が広がっている。広間にはL字ソファやテーブルがいくつか置かれ、いくつかの4,5人のグループがソファや各テーブル、あるいは床に座って談笑していた。第一印象は、大学生の宅飲み現場だ。

広間を見回すと、20代前半くらいのぽっちゃり女性がシャツをはだけさせ、豊満な乳を露出していた。そしてそれを平然と揉みしだく隣の男性。

もう一方では、なぜかTシャツとパンツだけを履いた男が1人。そしてそんなパンツ男とダーツを楽しむ女性2人。

そこそこの非日常空間だ。

広間の角には小さな入り口が設けられ、その先がプレイルームとなっている。仄暗いピンク色の照明に照らされた4畳ほどのスペースで、ネットカフェのように下はマットとなっている。壁際には大人の玩具らしきものがいくつか並べられていた。

壁の上半分はマジックミラーとなっており、広間側から観覧することができる。また、下半分には小さな小窓が複数あり、そちらを覗く事で音も聞くことができる仕様だ。利用する際は店員に一言断りが必要とのこと。

初陣

 一通り説明を受け、店員が辺りを見回す。

じゃあここ座って

ソファでアラサーほどの女性2人組を挟む形で男性2人が座っており、テーブルを挟んでその向かいに座らされた。

はじめまして

名前なんて言うんですか?

ポシャです

ホサ?

テーブルを挟んで微妙な距離感なのと、店内が騒がしくてまともに声が聞こえない。それでもやりとりを試みるも、話を盛り上げることもできず微妙な空気になる。

やたらしゃべり倒す男性1人が女性2人と話し込み、もう一方の男性と私はただただそこに座り込むだけだった。

(これはいかん、、!)

しばらくしてしゃべくり男と女性がいなくなり、もう一方の男が1人で座っていた。まずは話し相手を作らなければ。自分もソファへ移動し、話しかける。

名前は忘れたが、元サッカー日本代表キャプテン、長谷部誠に雰囲気が似ている。仮に長谷部としよう。自分と同じく、今日がハプバー デビューらしい。

 2人で話してるうち、別の女性2人組がやってきた。おそらく20代前半だろうか、2人ともかわいかった。透き通った肌にどこか澄まし顔でキャリアウーマン感のあるM子と、長い黒髪に小顔でどこか小動物感のあるK子。ハプバー にも普通に可愛い子いるんだなあ、そう思った。

酒も入っていたことで経緯は失念してしまったが

気付いたら長谷部は全裸になっていた。

デビュー初日にして、しっかりと爪痕を残す長谷部

そんな彼のガン勃ちJrをしごくM子、相変わらずの澄まし顔だ。そしてなぜか、私は左手で彼に目隠しをし、右手でフェザータッチをしていた。

何をしているんだ私は。せっかく隣にK子がいるというのに、どうして私はわざわざ長谷部の右乳首と玉袋をサワサワしているのだ。

全てはその場のノリだった。しばらくして長谷部いじりが終わると、2人のかわい子ちゃんは立ち去ってしまった。ちんこギンギンで放置される長谷部。おもむろに時計を見たかと思うと、そろそろ終電で帰るとのことだ。

ポシャリーマン、ここにきて話し相手を失う。

とりあえず一服し、あたりを見回す。プレイルームの前に人だかりができていた。どうやらおっぱじまっているらしい。

様子を見に行くと、なるほど、一組の男女が桃色の照明の中体を重ねていた。男の方は引き締まったスリムな体型、女性側はそこそこのわがままボディだった。正直、自分の可食範囲外だ。

ソファに戻ると、男性が1人で佇んでいた。これは単身の匂い,そう思い声をかけてみる。するとここに来るのは初めてだが、女性2人の付き添いで来た、とのことだった(なんだよそれ、どんなご関係だよ)。

その女性はというと、先ほどのプレイルームに食い入るように見入っていた。

今ちょうどやってるみたいですよ、見ました?

見た、怪獣だよね

言いたいことは分かった。とにかく迫力、臨場感のある光景がそこには広がっていた。

そんな冗談を言う彼も、そのうちに帰ると言い出した。怪獣鑑賞をしていた女性達を引き連れ、帰って行ってしまった。

ポシャリーマン、ここにきて再びぼっち。話し相手もおらず、1人ソファでタバコをくゆらせる。居心地は、、よろしくない。

 そうこうしているうちにフロアが賑わってくる。どうやらこれからイベントが始まるらしい。毎月第一土曜日はイベントとして、その月に誕生日を迎える男女がその時その時催されるイベントに参加するとのこと。今月誕生日の男女が、下着姿で前に出るよう店員に呼びかけられる。

口では渋りつつも、服を脱いでフロアの前に出る女性達。こんなにも平然と若い女性達のおっぱいを拝見できるなんて、まさに異世界。普通にその辺にいるような人達が、次々とその裸体を晒していくのだ。

今宵行われるイベントは、スピードスター。参加者それぞれが男女ペアになり、最初に男をイかせた組が勝利をおさめることができる、早ヌき対決とのこと。ルールとしては、何でもあり。手でしごいてもよし、お口でご奉仕してもよし、はたまた合体してもよし。

スタートの合図とともに、一斉にちんこをしごかれだす男性陣。30人近い観衆の前でちんこをしごかれるって、どんな気分なんだろうか。10分ほどだっただろうか、各チーム手コキやフェラで健闘していたが、時間内に果てる男はいなかった。人前でイクのは難しいものなのかもしれない。

 イベントが終わり、またぼっちで飲みながら煙をくゆらせていると、プレイルームの前に人だかりができていた。中の様子を覗くと、先ほどのイベントに参加していた男女が中で入り乱れていた。延長戦だ。

中にいたのは3組7人。そう、1:1,1:1,1:2の男4人女3人だ。

この1:2側がこれまたなかなかのハードプレイ。後からは激しいスパンキングを受け、前からは頭を掴まれる女性。前後の穴を激しく侵されていた、まさに凌辱!そう、ポシャリーマンの好物!そしてそれをただ外から観賞する、指加えおじさん!

己の無力感を感じつつ席に戻るも、相変わらず話し相手はおらず。なんてざまだ!時間は分からないが、おそらくもう深夜だった。

 私は知っていた。この時間帯で何もないと、もうこの先も何もない。クラブの様子を見ていても、深夜の2時を回るとあらかた女性陣は外へと連れ出されてしまい、それ以降は生殖資源獲得競争の敗者達の狂宴が始まる。その悪夢がまた繰り返されようとしていた、今!ここで!

打開しなければ。この状況を打開するには、自分が動くほかない。口を開けて待っていれば餌が運ばれてくるほど、世の中は甘くないのだ。

周囲を見回す。

そして見つける、麗しい女性2人組。2人して部屋の隅で丸くなっていた。指加えおじさん、否!ポシャリーマンは立ち上がった。ドリンクを持ち、まっすぐ2人の元へと向かう。

元気?

…………

何やら2人で耳打ちして話している。

ああ、私は知っている、この感覚。まるで世界から自分という存在が消滅したかのような空虚感。シックス•センスの主人公もこんな気持ちだったのだろうか。

狂ったように相席居酒屋へ足を運んでいた時分、女性からそんなぞんざいな扱いを受けては、精神を鍛えたものだった。

しかしそれももう1年以上も前の話。今の私にこのガン無視攻撃は顎にクリーンヒットした。

精神が揺らぐ。

(やばい、明らかな脈なしだ)

なんとか2,3言話すも、全く話を広げることもできず、心が折れる。暇を持て余した指加えおじさんはまた煙をくゆらせた。最初に出会ったM子とK子が天使に思えて仕方なかった。しかし、もう彼女らはいない。

万策尽きた。

とても帰りたいが電車もない。全てを諦め、1人ソファに深々と沈み込む。

ぼっち救済措置

 そんな私の様子を見てか、急に店員さんに絡まれた。

ポシャ!野球拳すっぞ!(露出の多い服装をしておられたが、その者の属性については文字色にて判断されたし)

え?

ここでTシャツ&パンツの男も現れる。

全部脱げます?NGなら全然いいっすよ?

え?

、、喜んで!!!

うまく馴染めない私の様子を見ての、店員さんのはからい。断る理由などなかった。まだ20人近くはいただろうか。そんな中執り行われる、ゲリラ野球拳。

案の定私はすっぽんぽんになっていた。そしてこれがまた、非常に開放感があってよかった。もし今警察に摘発されたらアウト、そんな緊張感も良かった。

一糸纏わぬ姿でほっつき歩くポシャリーマン。ふと部屋の隅に目を移すと、先ほどの塩対応女子がものすごく怪訝な顔でこちらを見ていた。ポシャリーマンのポシャリーマンを見せつけられた、それだけでも良しとしよう。

シャンパン飲も!

なるほど、そういうことか。先ほどの店員が鴨りに来た。

なんでじゃ!

じゃクライナー!

うまい。最初に大きく出てから、一歩下がる交渉。そして今の私はとても無防備なかっこう。ぼっちの私を楽しませようとしてくれた手前、店に何も入れないのも若干気が引ける。それに現地のコミュニティに受け入れてもらうには、酒を酌み交わすのが定番であることをウルルン滞在記でも学んでいた。

クライナー1箱

そう言って店員さんは私の乳首をサワサワしだした。

(ここの店員えげつない、、)

どこからかもう1人店員が現れたかと思うと、なぜか俺のちんこをしごきだした。なんなんだこれは。

結局クライナーを1箱入れることとなった。たしか1万の追加出費、いたい!

クライナーを抱えた店員がフロアに出て一緒に飲む人を募る。

が、誰も来ず!なんて悲しい!なんて惨めな男なんだ!ポシャリーマン!自分のことでありながら、筆者としてこの男が哀れで仕方ない!他人事のように俯瞰して書き連ねないと、思い出すだけで精神がすり減ってしまう!

結局店員2人と3人で談笑しながら、クライナーは飲み干した。

 そうこうしているうちに、なんとか朝を迎えた。5:00以降は追加料金がかかるとの事だったため、撤収することに。帰る人は全体の半分くらいだっただろうか、意外と残る者が多かった印象だ。

部屋に散らばった服を回収して着るも、靴下を片方紛失。何をしているんだ、私は。

番号札を店員に渡し、預けた荷物を回収する。

退店。ひんやりとした空気と朝日。雑多なビル街に爽やかな空気が流れていた。

駅へと向かうと、さすがは新宿、朝帰り組がゾロゾロとゾンビのように駅に向かって歩いていた。かく言う私も、1撃3万0ハプゾンビとして駅へと向かった。次は生者として帰還することを胸に誓って。