相席屋

ORIENTAL LOUNGE 横浜編 その2

その1:ORIENTAL LOUNGE 横浜編その1|Let’s Go ポシャリーマン! (poshari-man.com)

パティシェことまおちゃんとのやりとりで、翌日一緒に飲む約束を取り付けたポシャリーマン。しかし彼女からのLINEの文面からは、ひどく酩酊している様子が読み取れた。誤字脱字だらけで毎回解読するのに難儀したほどだ。

下手すると翌日には忘れられてるかもなあ。そんな私の不安とは裏腹に、翌朝には彼女の方から連絡が来た。彼女の仕事の都合で、8時半に横浜で会うことに。

仕事中は心ここにあらずだった。とりあえず小洒落たイタリアンを予約し、そのあとはひたすら横浜駅周辺のラブホばかり調べていた。仕事をあがってからは急いで剃毛の儀を行い、横浜へと向かった。

横浜駅に着いた時、天気は雨だった。急いでコンビニでビニル傘を買う。これでもう何本目だろうか、また家の傘が増えてしまった。しばらくしてまなちゃんも到着。相変わらずのミニスカートに肩を出した白セーター、とてもそそるファッションだった。相席居酒屋にいた時は気付かなかったが、意外に身長が高く、ヒールも履いていたため自分とさほど変わらなかった。

交番の前で立つ私に気づくや否や、小走りで走って来る

入れて〜

そう言って自分の傘に入ってきた、、あざとい!、、でも、、でも、、

(傘買って良かったあっ!)

心の中で叫んだ。ポシャリーマンはもうハートを掴まれていた、実にちょろい男だ。心浮かれているのに反し、”そんな思わせにいちいち心揺れる青い男じゃないですよ”感を出そうとクールを装っちゃうあたりが、もう悲しいまでにポシャリーマン。たいしたリアクションもすることなく、雨の中店へと向かう。

イタリアンに入ったのは9:15、LOは9:30で店は10:00までだった。店内にもうほとんど人はおらず、奥のソファー席へと通される。シーザーサラダ、アヒージョ、肉盛り合わせ、マルゲリータ、、、2人してメニューを眺め、急いで決める。閉店時間が迫っていたため、来たものから2人してモリモリ食べた。

お店の小洒落た内装や料理で喜ぶ彼女の姿に癒される。一つ一つ料理の写真を撮ってる姿がまた微笑ましい。料理をつまみつつ談笑する。

名前はまおちゃん(仮名)。出身は新潟で、この春上京したばかり。昼はパティシェ、夜はキャバの二足の草鞋、バイタリティ溢れるチャキチャキ娘だ。

しばらく話していたら、話の流れで一瞬の沈黙の後、彼女から以前風俗で働いたことがあることを打ち明けられた。その一瞬、穏やかだった彼女の目の奥に、何か冷徹なものを見た気がした。女が男を格下認定した時のような何かを。

(たぶん)自然に相槌を打ててたと思うが、内心だいぶ動揺した。彼女はどういうつもりでカミングアウトしたのだろう。異性として俺が眼中から外れたという事だろうか。あの目はもう興味のない人間を見る目だったのだろうか。

入店して1人目のお客さんが、いきなり自分の親よりも年上の爺さんだったため、速攻で辞めたとのことだった。”じじいとはヤれん” このワードだけが印象深く残り、もはやそれ以外の話の内容を覚えてない。

そうこうしているうちに閉店の時間となった。2軒目へ向かうことに。外は雨、傘を開くも、彼女は自分の傘を開いた、ちょっと悲しい。カミングアウト時の冷たい目が脳着をよぎる。きっとできる男ならば、ここで堂々と”入りなよ”とでも言うのだろう。

次は大衆店で飲みたいとのことだったので、西口一番街へと向かう。店内は賑わい、とても密だった。適当に空いてる店につき、2人でサワーのみ頼む。

”ポシャは遊んできてもう落ち着いたって感じがするね” そう彼女は言った。見当違いもいいところだ、年齢的にはそうあるべきだろうが、過程が全く違う。素性は最初から落ち着きっぱなしで年ばかり取って拗らせたモンスターだ。しかし馬鹿正直にそんなこと言ったって何にもならない。

”遊ばずに年取って、あとになって拗らせるよりいいっしょ?”

もう自分を遊び人設定し、暗に自分が遊んできたということを肯定した。

遊べてないのに。

今まさに拗れてるのに。

”間違いない。私ももういいかなあ、前は遊んでたけどね。たぶんポシャが思ってるよりやってるよ笑”

俺の思う以上ってなんだよ、こっちは言うても30年以上生きてるんだ。

”学校でヤッたとか?”

咄嗟に出したのがこれ、今思うと大したことないが、自らの経験を伴わないポシャリーマンの想像力では、この程度のものしか出てこなかった。

”高校の男全員とやった笑”

現実は小説より奇なり。私は驚嘆し、また落胆した。つまり彼女の母校では、少なくとも彼女の同期にポシャリーマンはいないのだ。女神じゃん。この世から多くのポシャリーマンの芽を摘んだ、新潟の女神じゃん。

そしてなぜ、自分の周りにそんな女神はいなかったのだろう。私はひどく、ひどく嘆いた。

時刻は12時、(俺の)終電はない。退店する。

”もうちょっと飲もうよ”

”どこで?”

”ホテル飲み”

”無いかなあ”

”そっか”

はい、、、ポシャリーマンは押しが弱い。

意気消沈戦意喪失。かつては多くの愛を撒いた女神だが、ポシャリにほほ笑むことは無かった。

言葉に詰まってると、彼女の方から提案が

”カラオケは?”

”いいね(よくない)”

深夜のカラ館に行く。カラオケは以前、P活娘と来て以来だ。彼女の選曲にジェネレーションギャップを感じずにはいられなかったが、(上の空になりながらも)楽しんだ。最近の子ってultra soul知らないのね。

時刻は2:00。だめだ、眠い。行く当てもなく退店。外は台風でも来てるかのような豪雨。

お宅訪問打診をする勇気すら出せず、タクシーを捕まえて彼女を見送った。書いてて思うが、我ながらくそダサい。なんというチキン。

深夜の横浜、ポシャリーマンは雨の中立ち尽くしていた。

浮かれてる時というのは、だいたいうまくいかない。(※注 浮かれてなくとも、うまくいってない)

今まさにそれが現実のものとなった。

もうここに来るのも何度目だろうか、駅前の漫喫、”俺の部屋”に泊まる。

悲しみに暮れながら、彼女にお礼のLINEを入れ、眠りについた。

to be continued